キャンプの経済活性化に関わる質問に関する回答(とある専門学校生の質問より)

とある専門学校生の卒業課題かなんかで、質問を受けたのでそれをまとめてみたら、つどいの森関係者のみならず、利用者に対しても参考になると思われたのでここに掲載します。

 

キャンプ場関連の質問

1)キャンプ場が盛岡にある意義(盛岡でなければならない理由)

都南つどいの森は盛岡市所有の施設なので盛岡市内に立地しているのは当然として、もしここが行政機関としての盛岡市に縛られない施設であったらという仮定でお答えしたいと思います。

キャンプ場の立地箇所が盛岡市内である意義は、直接的には全くありません。何故なら利用者や運営者が行政的な立地箇所についてキャンプ場を選んだり施設運営の基準にすることはほぼ皆無だからです。一方、遠隔地に行かなくても近場でキャンプ体験やそれに付随する非日常体験ができるという点で、盛岡市内それも中心部から車で30分以内の立地にキャンプ場があるということは大いに意義があります。もちろんそれはキャンプ場が盛岡でなければならない理由にはなりませんが、少なくともつどいの森を訪れたことがない利用者には「盛岡にあるキャンプ場」が「利便性が高いキャンプ場」というイメージを与えるのは間違いないでしょう。お答えになってないかもしれませんが、つどいの森の立地的な特徴はこのように「盛岡中心部からさほど遠くない場所に、自然豊かな非日常性を味わえるキャンプ場である」ことに尽きます。

 

2)バーベキュー(BBQ)の素材の地産性

BBQの肉、野菜等の素材は昨年まで老舗スーパーの「川鉄商店」に依頼していましたが、この春に倒産してしまいました。その後、こちらの条件に合致する小売業者を探していましたが、「盛岡南ショッピングセンターNACS」が川鉄商店と同じように肉ほか野菜など一緒に小ロットで納入してもらえるようになりました。このようにキャンプ場では小規模でもすぐ対応できる小売店の存在が欠かせなく、素材の地産性は二の次になります。したがって川鉄でもNACSでも、どこ産の商品を使っているか、つどいの森としては把握してないのが現状です。安くて利便性のある地産品を扱ってくれる店があればそちらに乗り換えたほうがいいのですが、一般的に地産品ではそのような対応が難しいのが現状です。

熊肉(下左:岩手県産)と鹿肉(下右:紫波町産)と豚肉(上:アメリカ産)
これらは一般のお客さん用肉ではなくあくまでも身内(あかばやし探検隊)で楽しむもの

 

3)盛岡市内におけるキャンプの有益性

(1)でも述べた通り、キャンプという非日常を味わえる場所が盛岡市内にあるという点は、利便性の点で大きな有益性があります。また逆に言えば、真に非日常性を求める人には「すぐ行けるキャンプ場」に物足りなさを感じてしまうのかもしれません。そこら辺のバランスをとることが盛岡市内におけるキャンプの有益性に密接に繋がるでしょう。

つどいの森に関して言えばその立地を考えた時、県立自然公園に推す動きもある志波三山地域にあること、街道筋から離れていること(志和稲荷街道から1.2km奥にある)、クマ、カモシカ、イノシシ、テンなど近隣に野生生物が生息していること、植生が豊富なこと(樹種100種以上)、近傍に盛岡市街地はじめ北上山地北上盆地を眺められる展望地があることなど、「すぐ行けるキャンプ場」としては有益で稀有な属性を備えていると言えるでしょう。

 

4)自然災害、天候悪化への対応

つどいの森で最も起こりやすい自然災害、気象災害は豪雨による河川の氾濫とそれに伴う土石流でしょう。2013年の8月9日に起こった雫石紫波豪雨による土石流災害は、つどいの森内を流れる小沢に尋常でない水の流れを生み出し、強まった侵食作用により自身の流路を変えたほか、一部では土砂崩壊や土砂流失を起こしました。おそらくこれが過去につどいの森で発生した災害のうち最も大きなものでしょう。

つどいの森の北縁部を流れる大沢の沢部はこのように上流から流れてきた土砂で埋め尽くされ場所によっては3mも沢床が上昇しました。沢部の被害はこのように甚大であったのですが、つどいの森の施設のほぼ全てがある台地上のキャンプ地の被害はほとんどありませんでした。また、大雨等天候悪化による大きな不具合は、キャンプ地内では発生したことがありません。

地球温暖化に伴う気候変化で今後気象災害の頻発が予想されています。キャンプ場内でも予期せぬ異変に対応するよう、周辺環境の変化が起こっていないか常に観察を行うとともに、再来年の施設整理に向けて危機管理対応マニュアルを整備する予定です。またそれに先行して災害の背景となるつどいの森の地形地質的な位置づけについて今年整理を行いました。下図はその一部です。参考までに掲げます。

つどいの森の地形地質を想像するための鳥観図(赤色立体地図)

tsudoinomori.hatenablog.com

 

その他

1)管理者が思うキャンプの楽しさ

キャンプは無条件に楽しいものです。この楽しさは人間が人間らしく生活する上で欠かせないものだと考えております。決して大げさに言っているわけではありません。いつもの生活と全く異なる空間、夜と野火が近くにある環境、自ら働かないと得られない食事、寒い暑いを工夫で快適に過ごすまでの労苦、焚火や夜の匂い、静寂の音、ひんやりと冷たい感触。これらの非日常が混然一体となって襲ってくる体験は、人間がかつて動物だった頃、自然の一部にあったことを気づかせてくれる自己認識体験であり、余計な自意識をうっちゃってくれるものなのです。火を見つめて何か考えますか? 恐らく何も考えていないはずです。キャンプとはそういうことなのです。

つどいの森を運営する我々管理者サイドも利用客の皆さんに日常を離れた世界で思う存分楽しんでもらいたいと、あまり細かいことは言いません。最低限プラスアルファの他者を思いやる気持ちと行動(人はこれをルールと言う)を持って、皆で気持ちよく過ごしましょう。

焚火をすることは自然に向き合うこと

2)キャンプがもたらす経済効果

ここまで読んでもらったら、この設問は愚問に思えるでしょう。キャンプで経済効果を計るなんて、当事者的にはかなりどうでもいいことです。と、言ってしまっては身も蓋もないのでちょっと考えてみます。

キャンプ場を賃貸すること、キャンプ道具を購入すること、キャンプ地まで自家用車含む交通機関で移動すること、特別なキャンプ飯を市場で調達することなどが直接的な経済効果になりますが、微々たるものです。ただ、間接的な経済効果となるとひょっとしたら観光消費という点でバカにならないかもしれません。この場合、付帯施設の集客や周辺地域への立ち寄りがポイントになります。付帯施設としては温泉やレジャー施設などが考えられますが、キャンプ場として何度もお客さんに足を運んでもらうことが重要です。周辺施設との連携も重要ですが、キャンプ場単体としての魅力が最重要です。そのため周囲の自然環境含めた魅力を損ねず、最大限引き出し、それを維持したり、流行り廃りに合わせて改変していくことが肝要です。理想的なキャンプ場というものは立地によってまちまちです。その立地での魅力を時代に合わせながら維持し続けるキャンプ場が、最も経済効果の高いキャンプ場と言えるでしょう。